
国家賠償と行政訴訟の基礎知識
私たちの生活の中で、国や行政機関の行動によって損害を受けたと感じることがあります。そんなとき、法律には私たちを守るための仕組みがいくつか用意されています。その中でも特によく聞く言葉が国家賠償と行政訴訟です。
しかしこれらは似ているようで実は目的や手続きが違います。まずはそれぞれの意味を理解しましょう。国家賠償とは、国や公共団体の職員が法律に違反する行為をして私たちに損害を与えた場合に、その損害を金銭で補償(賠償)してもらうものです。
一方、行政訴訟は、国や自治体の決定や命令などの行政行為に不服がある場合、裁判所にその取り消しや変更を求めるための訴えをさします。つまり、国家賠償は損害を補てんする手続き、行政訴訟は行政の決定自体を争う手続きといえます。
国家賠償のしくみと特徴
国家賠償は、行政機関の誤った行動によって不当に被害を受けた人が、国や地方公共団体に対して損害を請求できる制度です。
具体例としては、警察官の違法な捜査や、公務員の不注意による事故や誤診などがあります。
その際には、日本国憲法第17条や国家賠償法に基づき、事件の対象となる行為が違法であり、かつその結果損害が発生したことを証明する必要があります。裁判を通じて認められた場合、被害者は損害賠償金を受け取れますが、その手続きは一般的に請求者が証明責任を負うため慎重に行う必要があります。
国家賠償は、被害を金銭で解決するための仕組みなので、どんな行政の不満でも使えるわけではない点が特徴です。
行政訴訟の内容と使い方
行政訴訟は、行政機関の出した決定や処分などが法律に反していると思う場合に、その取り消しや変更を求める裁判のことです。
例えば、役所があなたの申請を不当に拒否したり、不適切な許可や処分を行った場合に、裁判で「それは間違っている!」と主張できる制度です。
行政訴訟には主に3つの種類があり、
- ①取消訴訟(行政行為の取り消しを求める)
- ②無効等確認訴訟(行政行為が無効であることを確認する)
- ③義務付け訴訟(行政機関に何かをするよう命じる)
行政訴訟のポイントは、損害賠償ではなく行政の決定そのものを争うことにあるのです。
国家賠償と行政訴訟の違いを表で比較
まとめ:使い分けが大切
国家賠償と行政訴訟は似ているようで異なる手続きなので、しっかり使い分けることが大切です。
もし国や行政の行動で損害を受けたら、まずは損害賠償請求(国家賠償)を検討します。
一方で、行政の決定自体に問題があると思ったら行政訴訟で、その決定の取り消しや変更を求めることになります。
どちらも法律の専門知識が必要なため、心配なときは法律相談を受けるのがおすすめです。
今後、日常生活やニュースで「国家賠償」や「行政訴訟」という言葉を聞いたら、今回の内容を思い出して違いを理解してみてくださいね。
国家賠償の面白いところは、損害賠償の対象となるのは国や公務員の違法行為に限定されている点です。つまり、行政のミスでも合法的な手続きの中での失敗は対象外なんです。
これにより、行政の活動が一定の安心感をもって行われる一方、被害者の救済が必要なケースでは賠償が認められるバランスが取られています。
中学生のみなさんも、もし学校や地域のルールで不当な扱いを受けたと感じたら、その理由が“違法かどうか”を考えることで法律の判断が見えてくるかもしれませんよ。