
引張強さと引張応力とは?基本の違いを理解しよう
ものの強さを表す言葉はいくつもありますが、その中でもよく混同されやすいのが「引張強さ」と「引張応力」です。
まず、引張強さとは、材料や物体が壊れるまでにどれだけ引っぱられる力に耐えられるかを示す「限界の強さ」です。
一方で、引張応力は「材料に実際にかかっている引っぱる力を材料の断面積で割ったもの」であり、材料内部に発生する力の度合いを表します。
つまり、引張応力は『現在の力の大きさ』を表す値で、引張強さは『耐えられる最大の力の限界』を表す値です。
この違いを理解しないと、材料の安全性を判断するときに誤った結論を出してしまうことがあります。
引張強さが大きくても、実際の引張応力がそれを超えると材料は壊れてしまうからです。
引張強さと引張応力の定義と単位を詳しく解説
引張強さは「材料が破断する直前の最大の引張応力」のことを指します。
単位は通常メガパスカル(MPa)やニュートン毎平方ミリメートル(N/mm²)で表され、強さの指標として材料試験で測定されます。
それに対して引張応力は、「実際にかかっている引張力(ニュートン)」を「材料の断面積(平方ミリメートル)」で割った数値で、同じく
MPaなどで表されます。
たとえば断面積が10平方ミリメートルの棒に100Nの力がかかっている場合、その引張応力は100N ÷ 10mm² = 10MPaとなります。
このように数値は同じ単位でも、引張強さは性能の目安。引張応力は実際の状態の力の大きさを示しているのです。
引張強さと引張応力の違いを表で比較
この表からわかるように、似ているようで性質が全く違う言葉であることがよくわかりますね。
なぜ違いを理解することが重要か?実生活での例
建物や橋、飛行機などの設計では、材料の引張強さを超えないように引張応力を管理しなければなりません。
例えば橋に大勢の人が乗っていると、その部分にかかる力(引張応力)が材料の引張強さを上回ると橋は壊れてしまいます。
安全な設計を行うためには、実際の力(引張応力)を常に計算し、材料の引張強さの範囲内に収めることが大切なのです。
また、材料選びでも丈夫な引張強さをもったものを選ぶことはもちろん、予想される引張応力に耐えられるかを考える必要があります。
こうした力の知識があると、様々な機械や建物の強さの秘密を理解し、身の回りの安全にもつながります。
今日は「引張強さ」という言葉に少しだけ深掘りしてみましょう。
実は引張強さは単なる数字ではなく、材料の内部構造や製造方法によって大きく変わる面白い特徴があります。
例えば鉄でも、冷やして硬くしたり、熱した後にゆっくり冷ますと引張強さが違ってくるんです。
だから引張強さの値を見ると、その材料がどうやって作られたかのヒントにもなるんですよ。
身近なものでも、ボールペンの金属の部分が折れにくいのは、この引張強さが高い材料が使われているからなんです。