
使用貸借契約書と賃貸借契約書の基本的な違い
不動産や物品を他人に貸す際に使われる契約書には、主に使用貸借契約書と賃貸借契約書の2種類があります。
この2つの契約書は名前が似ていますが、法律上の意味や内容に大きな違いがあります。
まず、使用貸借契約書とは、貸す側が無償で物を使わせる契約書です。例えば、親が子どもに家を無料で使わせる場合などが典型的です。
一方、賃貸借契約書は、貸す側が利用料を受け取って物を貸す契約書で、賃貸借契約を結ぶと借主は使用料(家賃など)を貸主に支払います。
このように、最大の違いは「対価があるかないか」にあります。無償が使用貸借、有償が賃貸借です。
次の章では、それぞれの特徴を詳しく解説していきます。
使用貸借契約書の特徴と注意点
使用貸借契約書は、物を無料で貸し借りする際に使われる契約書です。
法律上では、民法第597条で「使用貸借は、当該物の使用を目的とした無償の契約」と定義されています。
つまりお金をもらわずに貸すため、借主は返す義務があり、必要以上の損害を与えずに使う責任もあります。
使い終わったら物を元の状態で返すことが基本です。
ただし、使用貸借は無償であるがゆえにトラブルが起こりやすいことに注意が必要です。
例えば、無料で貸しても使用者が長期間返さなかったり、故意に傷つけたりする場合です。
そのため、使用貸借契約書には返却の時期や物の状態、貸し手と借り手の責任範囲を具体的に書いておくことが重要です。
また、税金の面でも対価がないため賃貸に比べて扱いが異なります。
賃貸借契約書の特徴とポイント
賃貸借契約書は、使用料を支払って物を借りる際に使われる契約書です。
不動産賃貸物件の賃貸借契約は、賃料(家賃)を払うことで部屋を借りる代表的な例です。
民法では賃貸借契約は「当該物の使用または収益を一定期間有償で貸す契約」とされています。
賃貸借契約書には、賃料、支払方法、契約期間、更新・解約の条件、保証金や敷金の取り扱いなどが細かく記載されます。
借主は借りた物を大切に使い、賃料を期日までに支払う義務があります。
貸主も契約に基づき物件を使用できる状態に保つ責任があります。
賃貸はお金のやり取りが発生するため、トラブルが生じても契約書に基づいて明確に対処しやすく、法的手続きもしやすい特徴があります。
使用貸借契約書と賃貸借契約書の違いを表で比較
以下の表で両者の違いをわかりやすくまとめました。
項目 | 使用貸借契約書 | 賃貸借契約書 |
---|---|---|
対価の有無 | 無償(無料) | 有償(家賃など) |
権利の性質 | 一時的な無償使用権 | 有償使用権 |
返却義務 | あり(無料なので早期返還も可能) | 契約期間終了後または解約時に返却 |
契約期間 | 自由に設定可能 | 通常契約期間あり |
トラブル発生時 | 対価がないため争いが複雑になることも | 契約書に基づき明確に対応可能 |
税金の扱い | 無償のため賃貸に比べ影響は少ない | 賃料収入として課税対象 |
まとめ:使う状況に合わせて契約書を選ぼう
使用貸借契約書と賃貸借契約書は、どちらも貸す・借りる時に使いますが
最も重要なのは「お金を払うかどうか」という点です。
お金を払わずに無償で貸すなら使用貸借、家賃や賃料を受け取るなら賃貸借契約書を使います。
また、賃貸借は期間や支払い方法など細かいルールが明確なのに対し、使用貸借は双方の信頼関係や合意が大切です。
契約書はトラブル防止のためにも必ず契約内容を明記しましょう。
これらの違いを理解して、状況に合った契約書を正しく使うことが安心な取引につながります。
今回の記事で触れた「使用貸借」という言葉、実は普段の生活の中でもよく使われています。例えば、友達にゲームを"貸す"とき、普通は無料ですよね?この時あなたが友達にゲームを無償で使わせているという法律的な立場はまさに使用貸借なんです!
つまり、身近にある物の貸し借りも、法律的に見ると使用貸借の一種なんですね。だからこそ、もし万が一返ってこなかったり壊された時には、どう対応すればいいかを知っておくと安心なんです。お金のやり取りがないからこそトラブルが起きやすいのも納得ですね。
このように使用貸借は意外と身近で使われている契約の形なのです。