
SLAと非機能要件の基本的な違いとは?
SLA(Service Level Agreement)と非機能要件は、IT業界やシステム開発においてよく耳にする言葉です。しかし、初心者にとってはこの二つの違いが分かりにくいかもしれません。SLAはサービスの品質を保証する契約書の一部であり、非機能要件はシステムが持つべき性能や性質を定めた要件です。
具体的には、SLAはサービス提供者と利用者の間で交わされる約束事で、例えば「サーバーの稼働率は99.9%以上」「障害発生時は30分以内に対応する」などの目標値や対応方法が明記されています。一方、非機能要件はシステム設計段階で決められるもので、「応答速度は1秒以内」「同時アクセス数は1000件対応可能」など技術的な条件を示します。
つまり、非機能要件はシステムの設計・開発のための基準、一方SLAはその非機能的な成果物をもとに提供するサービスの品質保証契約だと覚えておくと理解しやすいでしょう。
SLAと非機能要件の内容を比較した表
項目 | SLA(サービスレベルアグリーメント) | 非機能要件 |
---|---|---|
目的 | サービス品質の保証と利用者との合意 | システムの性能や品質を設計・開発時に定義 |
性質 | 契約上の約束事 | 技術的要求仕様 |
対象 | サービス(稼働率、対応時間など) | システム性能(応答速度、可用性など) |
作成時期 | サービス提供開始前または運用中 | 設計・開発段階 |
例 | 24時間365日の稼働率99.9%保証 障害発生後30分以内対応 | 応答速度1秒以内 同時ユーザー1000人対応 |
なぜ両者を正しく理解することが重要か?
SLAと非機能要件は単に用語の違いだけでなく、ITサービスの質と成功を左右する重要なポイントです。
まず、非機能要件を曖昧にするとシステム開発の基準が不明確になり、完成したものが期待に届かない可能性が高くなります。しっかり要件定義を行うことで、設計者や開発者は目標に向かって効率的に作業できるのです。
一方で、SLAは利用者とサービス提供者の間の信用を築くための重要な約束です。
高いSLAを提示してもシステムがそれを満たせなければ利用者の信頼は失われます。逆に、非機能要件をもとにした十分な品質のサービスを提供できれば、SLAでの約束の達成も実現しやすいです。
このように、非機能要件をもとにシステムを作り、その成果をSLAで保証する形が理想的です。
さらに、両者を混同せずに理解することで、開発と運用がスムーズに連携できると言えます。
SLAという言葉を聞くと契約書や難しそうな書類を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、実はとても身近なものです。例えばスマホの通信会社が「通信速度は99%の時間高速です」と約束するのもSLAの一つ。サービスの品質を数字で保証し、もし約束が守れなければ補償があることもあります。つまりSLAは信頼の証。だからこそ、SLAに書かれた数字の裏にはシステムの非機能要件がしっかり整っていることが大切なんです。