中嶋悟
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モル比と質量比の基本を理解するための前提
モル比と質量比は、化学の授業で頻繁に登場する基本概念です。モル比とは、反応に関係する物質の「物質量の比」を指します。ここでいう物質量はモル数で、1モルは6.022×10の23乗個の粒子の集合です。つまり、モル比は“粒子の数の関係”を表していると覚えるといいでしょう。反応式に現れる係数は、このモル比をそのまま現しており、例えばN2 + 3H2 -> 2NH3 の場合、N2とH2のモル比は1:3、NH3は2となります。
この考え方は、ガスの反応など、粒子の数が反応の進行を決める場面で特に役に立ちます。
一方、質量比は物質の“重さ”の比です。モル比と違い、質量比は実際に測定可能な量で、キッチンの秤や研究室の天秤で直接測れます。質量比を求めるには、各物質のモル質量（1モルあたりの質量、単位は g/mol）を使います。モル比が係数として現れるのに対して、質量比を得るには、その係数に各物質のモル質量を掛け合わせて、重さ同士の比を作ります。例えば水の生成反応2H2＋O2→2H2Oでは、モル比はH2:O2=2:1ですが、H2とO2の質量比は(2×2.016):(1×31.998)≈4.032:31.998となり、総質量は反応物と生成物で同じく36.03 gとなります。
このように、モル比は“どのくらいの数を使えばよいか”を示し、質量比は“実際に重さとしてどのくらいか”を示します。
このように、モル比と質量比は同じ反応でも別の見方を提供します。化学のさまざまな課題でこの違いを押さえておくと、式を解くときの戸惑いがぐっと減ります。
次のセクションでは、実際の計算と使い分けのコツを、具体例と共に詳しく見ていきましょう。
以下は基本表の例です。
実際の計算と使い分けのコツ
ここでは、実際の計算手順と、モル比と質量比をどう使い分けるかのコツを、身近な例とともに解説します。まず、反応式が与えられたときには、最初に係数からモル比を取り出します。次に、各物質のモル質量を掛けて質量比へ変換します。例として N2＋3H2→2NH3 を取り上げます。もし反応に使うN2が28 g、H2が6 gあるとすると、まずモル数を求めます。N2は28 g ÷ 28.0 g/mol ≈ 1.00 mol、H2は6 g ÷ 2.016 g/mol ≈ 2.98 mol。モル比は1:3なので、H2は反応に必要な量より少し不足しています。もしH2を3 mol使うと、N2は1 molで十分ですが現実にはH2が不足しているため、反応はH2が限界反応物となりNH3の最大生成量はおおよそ2×17.03 g/mol×2=34.06 g相当になります。ここから、実際には収率の差を考え、得られるNH3の質量を推定します。
続いて別の見方、質量比の視点では、N2を28 g、H2を6 g使うとそれぞれの質量はそのまま反応物の総質量となります。反応が進む場合、NH3の質量はモル質量17.03 g/mol×2 mol＝34.06 g程度を目安として見積もりを立てられます。現実には収率が100%でないことが多いので、34 g前後を目安に、余剰分のN2やH2がどれくらい残るかを考えながら実験を設計します。
この手順を繰り返していくと、モル比と質量比の両方を自然に使い分けられるようになり、反応の設計や学習の理解が深まります。
最後に、授業での注意点として、モル質量の読み間違い、係数の見落とし、単位の混同などの基本ミスがあります。これらを避けるために、反応式を平衡させた後、各物質についてモル数と質量の両方をチェックする習慣をつけましょう。
友人と勉強会をしているとき、モル比の話題が出ました。私はモル比を「反応に関わる物質の数の割合」と覚えると説明したところ、友人は「それって料理の分量と似てる？」と言いました。私は例として水の生成反応を取り出し、2モルの水素と1モルの酸素が結びついて2モルの水になると伝えました。そのとき彼はふと、粉ミルクと水の混ぜ方を思い出し、「モル比は粒子の数の話だから、同じ体積でも分子の重さが異なるとバランスが変わるんだ」と言いました。私はさらに、質量比は同じ反応でも重さの比で考えるのだと補足しました。結局、モル比と質量比は別々の道具箱の機能だとわかり、化学の授業が日常の会話にも活きると感じた瞬間でした。
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